安藤の随筆 あのよろし 伯父と子機と私

十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人。
幼い頃並外れて優れた子供でも成長するにつれて平凡な人間になってしまうことはよくある。そういう意味のことわざである。
私の母の兄、いわゆる伯父さんは子供の頃秀才で街でも評判のお坊ちゃまだったそうだ。
もちろんその時代に私が生まれているはずも無く身内から聞き伝わった話であるからほんとかどうかは定かではない。

ただ私が中学生まで伯父さんに家庭教師をやってもらったのは事実である。
そんな伯父さんも今では還暦を過ぎ毎日ジムに通いながら書道を嗜む平凡な只の人である。
もっぱら私が家庭教師が出来るように結婚して子供でもいれば伯父孝行なのだが。

さておき、そんな伯父さんが先週九州へ旅行へ行った。
九州は佐賀が我々安藤一族の本籍であり、ルーツである。
なので今もなお、親戚が住んでいて伯父はその親戚に会いに行ったのである。

伯父は朝早くの新幹線、ひかりで新大阪で乗り換え福岡へと向かった。
福岡に着いたら親戚のところに電話で連絡して合流する算段であった。
伯父は携帯電話を持っていない。しかし、今のご時勢といえども駅などの人が多く集まる場所では公衆電話が少ないながらもあるのでそちらの心配は必要なさそうだ。
そんな伯父から家に電話がかかってきた。

伯父「無事に九州に着いたきねー。」

私「うん!楽しんできてねー!」
いつもと変わらぬ伯父の声に安心し電話を切ると一つ不可解なことに気がついた。

ん?電話の子機が鳴ってない?
そういえばさっき子機の着信音がなっていなかった。
何でだろう?充電切れたか!?

様子を見に電話の子機が置いてある部屋に行ったのだが充電器に子機が無い。
部屋を見回し、他の部屋も探したのだが何処にもないのである。

子機此処にあらず!!!!!!
いやな予感がした。
伯父 携帯持たず
九州 着く 連絡する必要がある
その日を境に家の電話の子機無くなる
どうやら伯父は九州旅行へ電話の子機を持って行ったらしい。
伯父は旅から帰るとおもむろに旅行かばんから子機を取り出し充電器へとセットし、

「子機は九州では使えなかったばい。」
と博多なまりで教えてくれた。
今でも私の家庭教師な伯父であった。

20160706koki

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